大判例

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東京高等裁判所 昭和43年(ネ)2864号 判決 1969年7月07日

控訴人

ヒルトン・インターナショナル・カンパニー

外二名

代理人

長島安治

外二名

被控訴人

東京急行電鉄KK

外一名

代理人

長野潔

外一名

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人らの連帯負担とする。

事実

控訴代理人は、原判決を取消す。本件を東京地方裁判所に差戻す。との判決を求め、被控訴代理人は、控訴却下の判決を求めた。

控訴代理人は、本判決末尾添付の「控訴の理由」と題する書面の通り陳述し、被控訴代理人は、「控訴人らは原審において命ぜられた訴状に貼用すべき印紙の額及び民事訴訟用印紙法所定の額の印紙を本件控訴状に貼付すべきであるのに拘はらずその貼付をしないので本件控訴は不適法として却下を免れない。もつとも、本件においては既に口頭弁論期日が指定されたのであるが、これによつて右の所定の印紙貼用義務を免れるものではないから、本件控訴状に右所定の印紙に不足の印紙追貼命令を発せられた上で、控訴人らがこれに従わないとき本件控訴却下の判決がなされるべきものである。」と陳述したほか、原判決事実欄記載の通りであるからこれをここに引用する。

理由

被控訴人らは、本件控訴状には法定の印紙の貼付がないので本件控訴を不適法として却下すべきものである旨主張するので、按ずるに、控訴人らが提起した本件訴を原審は法定の印紙の貼用が不足であることを理由として却下する旨の判決をしたのであるから、この判決を不服として提起された本件控訴審において審理の対象となるのは、原審が控訴人らの本件訴を却下した判決の当否であつて、これが当審における審理の本案となるといわなければならない。ところで、このように訴状に貼用すべき印紙額が不足であるとして訴を却下した判断の当否を争うことが控訴審の本案である限り、控訴状に貼明すべき印紙額は、現に訴状に貼用された印紙額を基準とし、民事訴訟用印紙法に従つてこれを定むべきものと解するのが相当である。何故ならば、(1)もしこのように解することなく、このような場合にもまた控訴審は本案前職権を以て訴訟物の価格を判定し、訴状ならびに控訴状に貼用する印紙額を定め、もしこれに不足あるときは裁判長において追貼を命じ、これに応じないときは裁判長が控訴状を、あるいは裁判所が控訴を(控訴状の送達後の場合)却下すべきものと解するときは、当審において口頭弁論を経て審理せらるべき本案である原判決の当否は、既に本案審理以前の段階において実質上判断を受けてしまう結果となつて理論上当を失すると考えられるのみならず、(2)他方、仮りに原審において訴状送達前訴状貼用印紙の不足を発見し、所定の手続を経て裁判長が訴状を却下した場合には、原告においてこれに不服を申立てるにあたりただ即時抗告用の印紙を貼用するだけで足りるのに反し、原審においてこの不足を看過して訴状送達を行つた結果、後日所定手続を経て裁判所が訴を却下した場合には、原告において控訴審の判断にもとずく訴訟物の価格に応じ訴状ならびに控訴状に民事訴訟用印紙法所定の印紙を貼用しなければ原裁判所の印紙額判断につき不服を申立て得ないことになる結果、訴訟物の価格如何によつては(本件では、原判決が「十億円を下廻わらない」旨判示しているのである。)、その間甚だしい不均衡を生ずるおそれがあるという実際上の不都合を免れないからである。(なお、当事者適格を欠くとの理由を以て訴を却下した判決に対する控訴につき、原判決の右判断を支持する場合控訴審のすべき判決が「控訴却下」でなく「控訴棄却」であるべきものとした最高裁昭和三二年(オ)第六七二号、同三四年六月一六日言渡、民集一三巻七一八頁も、原判決が訴却下の理由とした不適法の存否は、右判決に対する控訴の適否を定める段階においては問題とすべからざる場合の存することを認める点においては、当裁判所の前記判断と相通ずるものがある。)以上のとおりであるから、本件訴状に貼付された金五〇〇円の印紙に金二五〇円を加えた印紙を控訴状に貼用した本件控訴は適法であるといわなければならない。《以下省略》(川添利起 荒木大任 長利正己)

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